原神研究室

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【原神】最適な会心率ダメが1対2であることの数学的な証明

 前提知識は高校1年生の二次関数のみ.
 さて,本題.
 会心が発生しない時のダメージを Dに対して会心p会心ダメージrが乗るとする.
 この会心ダメージの期待値(平均)は  D \cdot (1.0 - p) + D(1.0 + r) \cdot p = D(1.0 + pr) である.  よって1.0 + prを最大化することが目標.今後これを期待会心と呼ぶことにする
 ここでは簡単なモデルから始めて,次に実際のやや複雑に見える原神システムを2段階で扱う.

簡単なモデル

 ここでは聖遺物のサブオプのみという簡単なモデルを考える.つまり以下の要素を削ぎ落とす.

  • 初期ステータスの率ダメ
  • 聖遺物のメインop
  • 武器の会心

 さて,率ダメスコア一定という制限の元で1 + prを最大化してみる


\begin{align}
\max & &1 + pr & =:f(p) \\\
\rm{s.t.} & &2p + r &= k
\end{align} 

例えば率ダメが (p, r) = (40\%, 80\%)のときスコアk = 160\%だが,これより最適な振り方が存在するかが興味.
束縛条件(s.t.)と合わせて期待会心fpについて上に凸の二次関数である.その最大値は2次関数の平方完成よりすぐに分かる.


\begin{align}
f(p) &= -2(p - k/4)^2 + 1.0 + k^2/8 \\\
&\leq 1.0 + k^2/8
\end{align} 

 等号成立条件は(p, r) = (k/4 , k/2),すなわち率ダメ比率1:2 \blacksquare.
 この式から読み取れることは,会心が全くない時にくらべて平均で(率ダメ積)^2/8分のダメージが上乗せされる.
 例えば率ダメスコアがk = 160\%のときは(p, r) = (80\% , 40\%)のとき期待会心132\%.必死にスコアを%160まで伸ばしても期待会心がこんなに低いことは実際はない.

実際の原神システムの場合

 ここまでは聖遺物のサブオプのみという簡単なモデルを考えたが,以下の要素を削ぎ落としてきた.

  • 初期ステータスの率ダメ
  • 聖遺物のメインop
  • 武器の会心

 これらの(率,ダメ)の合計を(p_0, r_0)とおく.聖遺物のサブオプを(p,r)とおくと期待会心最大化は次のように定式化できる


\begin{align}
\max & &1 + (p + p_0)(r + r_0) &=:f \\\
\rm{s.t.} & & 2p + r &= k \\\
& &\Leftrightarrow 2(p+ p_0)  + (r + r_0) &= k + 2 p_0 + r_0 \\\
& & &=: k'
\end{align}

 数式をよく眺めてみると最初の簡単なモデルにおいて(p, r)を平行移動したのと同じ.fの最大値は同様に

 
\begin{align*}
f &= -2\{(p + p_0) - k/4\}^2 + 1.0 + k'^2/8 \\
&\leq 1.0 + k'^2/8
\end{align*}

 等号成立条件は(p + p_0, r + r_0) = (k'/4 , k'/2) ,すなわち率ダメ比率1:2 \blacksquare.
 この式から読み取れることは,会心が全くない時にくらべて平均で(率ダメ積)^2/8分のダメージが上乗せされる.

 例えば武器として黒剣,会心ダメ%冠を持った主人公の率ダメスコアが120%のときを考える.
 k' = 120\% + 2\times (27.6\% + 5\%) +  (62.2\% + 50\%) = 297.4\%だから  \max f \fallingdotseq 210\%.つまり率ダメを全く意識しないときに比べダメージが2.1倍程度に伸びる.  ちなみにこのとき聖遺物のサブopは(p, r) = (41.75\%, 36.5\%).サブopで率40\%程度確保するのは困難だが理論的にはこれが最適.
 なお,1対2が最適にならないケースもあるがここでは扱わない.